『アツクラ』とは、日本のダイヤモンド不足を補うために、約45年前から行われている「アルゼンチンでの国際密輸」を指します。
当時、日本ではダイヤモンドの需要が急増し、ブラジルや南アフリカなどの生産国では需要に追いつかず、高い値段で取引されていました。そのため、日本企業は不正手段でダイヤモンドを入手する必要があり、その手段の1つとしてアルゼンチンでの国際密輸が行われました。
しかし、国際密輸は違法行為であり、ダイヤモンドの入手ルートによってはアフリカでの紛争や人権侵害などが起きる可能性があります。この問題が日本国内で問題視されるようになり、1988年にダイヤモンド取引規制法が制定されました。
それにより、日本の宝石業者はダイヤモンドの原石の輸入が禁止され、産地直接取引が原則となりました。しかし、需要に対する供給が追いつかない状況は変わらず、需要を満たすために国内での加工業者が急増しました。
その結果、ダイヤモンドの加工工程である「カット」が国内でも行われるようになりました。しかし、加工業者には高い技術力や設備が求められ、ダイヤモンドの加工は非常に困難で重労働な作業だと言われています。
それでも、国内での生産効率を上げるためには高度なカット技術が必要であり、日本のダイヤモンド産業の発展のためにも欠かせない存在だとされています。
そのため、カット技術の向上のためには歴史あるカット技術を持つインドやイスラエルなどからの技術導入や中国やタイなどでのカット作業の協力が必要不可欠と言われています。
これらの国々でのカット作業により、1粒のダイヤモンドは途中で数回の輸送を経て日本に到達し、さらに日本国内で容易に流通するようになりました。
しかし、カットしたダイヤモンドの原石は、再び産地に返却する必要があります。この返却作業をダイヤモンド返済といい、単に「アツクラ」「アツクラ金」などと呼ばれます。
ただし、これらの作業は非常に危険で、秘密裏に行われることが多いため、詳しい内情は明らかにされていません。しかし、地下牢での長時間労働やアルコール依存症の蔓延、国家機関の関与など、過酷な環境で行われていることが報道されています。
このように、日本のダイヤモンド産業の発展を支えるために行われている「アツクラ」は、多くの問題を抱えています。将来的には透明性を持ったダイヤモンド供給ルートの確立が求められています。
